2011年12月10日土曜日

小坂洋右「日本人狩り」より



222頁より抜粋

「コサカさん・・・・」
「レーニン」氏のひと言で私は我に返った。立ち並ぶ墓を前に何か言いたげな様子である。
「人生というものは実に短いものです。そして、人は何もできないで死んで行く。私は本当にそう思います」
何か思うところがあるような口調で「レーニン」氏は続けた。
「しかし、ロシア人はね、パーミチ、つまり記憶をとても大切にします。ほら、お墓の前には必ずベンチがあり、墓には故人の写真や胸像があるでしょう。訪れた人たちは、ベンチに座り、思い出話を個人に語りかけ、あるいは友人、家族同士で懐かしい記憶をたどるのです。記憶の中で、人は生き続けるのです」