2012年5月9日水曜日

足立啓二「専制国家史論」より



114頁~115頁より抜粋

中国とほぼ時を同じく国家形成をとげた古典期アテナイでは、民衆法廷における原告と被告の厳密に制度化された対等な弁論と、それを承けた陪審員の二者択一の票決によって裁判は決着した。原告・被告・判定者を含む共同体構成員の間でのルールの共有を前提として、争いあう両者の間で確定された争点に対する審判によってアゴン訴訟の結論は確定する。これにたいして中国の裁判は、訴え出に応じた行政機構による処分を基本性質とする。秦代に基本的に制度確立した中国の裁判は、県への訴えから始まり、拘引・身元確認・取り調べ・自供の獲得、それに応じた刑の量定・判決へと進む行政行為である。判決は争いあう両者が確定させた論点に対する判定ではなく、状況と法律に依拠した秩序回復のための適切な処置である。